研究と不安とプレッシャーと就活と国家試験の助言と【再掲】
どうも、今年が始まってはや1ヶ月が過ぎました。皆さまは如何お過ごしでしょうか。
僕はイギリスに来て1年と7ヶ月が過ぎ、論文に成果をまとめるまではまだまだ遠い状況に焦りつつ、全工程数20段階超(予定)の全合成という、今までに挑戦したことのない未知の領域に入り、研究を終わらせられるのかという不安はもちろんプレッシャーを感じずには居られない状態です。
今年になってやっと最初の12段階のルートが確立でき、各段階の収率は概ね良好と行ったところで最初のステップから20gで量上げを開始しました。
今日は土曜日でしたが、水添でベンジル基を脱保護してアミンをトシル化する為に研究室に足を運んだのですが、ここで事件。
研究室に行ったら水素ガスを充填したバルーンが完全にしぼんでおりました。
反応溶液をパスツールで一部とり、セライトでピペット濾過をしてNMRを確認。
うぅ、原料が残ってやがる、10%くらい。今日はトシル化は諦めて水素を改めて充填して反応を放置して来ましたとさ。
まぁ先は長いし慌てなーい、慌てない(一休さん)。
※このネタを研究室の阪大からきた博士課程の子に言ったら「一休さんは知ってますけどそのネタは知らんすわ」と言われました。ほんとジェネレーションギャップよね。
水添に関するマニアックな話。
水素添加反応:その名の通り化合物に水素を付加する反応。アルケンをアルカンにしたり、アルキンをアルカンまで還元したりアルケンで止めたり、ベンジル基を取り除いたりと色々活躍する反応である。通称、水添。
接触還元:不均一系触媒(Pd/C、PtO2など)を用いる水添反応を指す。均一系触媒(Wilkinson触媒やCrabtree触媒が有名)を使った水添反応は接触還元とは言わない。つまり、より厳密に実験内容を示すには接触還元と言った方が良い。
ここで面白いのが学会発表。
接触還元の実験を薬学部ではよく水添、水添と言うが理学部ではきちんと接触還元と言う。薬学部では出来たモノに興味があるのであってそれが不均一系触媒によるものなのか均一系触媒によって出来たのか、その過程は重要ではないのだ。しかし理学部は違う。理学部ではどうやってそれが出来たかを大事にするのできちんと接触還元と言うのだ。ちょっと興味があったら学会で接触還元をなんて発表するか耳を傾けると面白いかもしれない。
そして今年待ち受けるのは、2020年以降のポジション確保のための就活。
オックスフォードの研究が論文になる➡️就活ちょっと楽しみ
オックスフォードの研究が論文にできない➡︎就活やばい
という事ぐらいは能天気な私でも容易に想像がつくであります。
しかしですね、人は乗り越えた困難の数だけ大きくなれるのです。
そう、だから最近体重ばかり増えてしまって。。。orz
2月と言えば薬剤師国家試験の時期ですね(唐突)。
僕のブログを読んで下さっている(と思われる)薬学部の諸君に向けて少し国家試験前のお話しを思い出しながらしますね。
まず1月末にインフルエンザにかかりました苦笑。
予防摂取までしたのにー。
インフルで国試前最後の模試(自信をつける為かそれ以前の模試よりは点数が取れるとウワサのやつ)が受けれませんでした。1月は相当気合い入れて一年の中でベストの状態だったので何点取れるか楽しみだっただけに残念。
(こんなことFacebookで呟く暇があれば勉強しましょう)
そんなこんなで2月に入り、無事インフルも治りこれで国試当日にインフルになる心配はなくなったぜなんてポジティブに捉える事にして、最後の卒業試験があって無事卒業が決定して、国試まで残り3週間で講義もないので大学院のある熊本大学に遊びに行ったりしてました。
そこで熊本大学の先生に「国試きちんと受かってから来いよ」と言われ、一週間最後の追い上げに気合いが入ったのを覚えてます。
そして迎える国試前夜。
うむ、もちろんあんま眠れないよね。
万全の体調でテストに臨むって言うけどさ、それ自体が難しいんだなこれが。
だからみんなもまぁ国試の日は体調はイマイチだろうけど、そう言うもんだと思っておいた方が気が楽だぜ。
あんまり眠れなかったから朝6時からイヤホンつけて大学の周りを散歩しました。
聞いていた曲はと言うと。。。
Bonnie Tyler の I need a hero をひたすらエンドレス。
これ、相当テンション上がるからオススメ。決戦に向かう感じ、まじオススメ。
そして二日間に渡る国家試験が終わり、自己採点。
うむ、もちろん問題ない点数(得点率9割弱)だったが薬剤が一番悪かったぞい。
次は法規だったね、人間が決めたルールをひたすらに覚えるのはかなり大変である。
僕は薬剤の先生が苦手だったので確かに勉強も感情的になって他に比べて不十分だったなと反省。
だからこのブログを読んだ国試前の諸君は2月は自分の苦手な先生の教科を勉強するといいぞ。これ絶対。
と言う事で、これから卒業試験があったり国試が控えている人は頑張ってください。
※小言
なんでBonnie Tyler の I need a hero なんて曲を聞いていたかって言うと直前にやっていたゲームがたまたまSaints Row 3だったから(ラストミッションの曲がI need a hero)。
2022年2月追記:
イギリスの成果は論文になりました!
乗り越えた苦労の数だけ大きくなる、最近は体重だけでなく白髪も。。。非情なり。
国試前だから再アップしてみました!
イギリスで出会ったいろんなホームレス【再掲】
どうも、伊予柑です。
オックスフォードで生活していると町のいたるところにホームレスがいます。
世間には勉強できる人がいます。運動できる人がいます。努力できる人がいます。
一方で努力できない人もいます。
どういう経緯で彼らがホームレスになったのかは知る由もありませんが、ホームレスはいるのです。
イギリスのホームレスは通行人からお布施を貰う習慣があるので人通りの多いところによくいます。
「Any change please」
と声をかけられたら「お駄賃ちょーだい」という意味なのです。
「Sorry, man」と一言おいて断るのが良いでしょう、無言で過ぎ去る人も多いですが。
断ったとしても大抵は「Thank you, have a good day」とか言ってくれたりします。一部食い気味にマジで食べるものも買えないからお金くれって言ってくる人もいます。
そんな訳でイギリスで生活していると、とにかくよくホームレスに絡まれます。
今日はそんなイギリスで出会ったホームレスについて書きます。
【病院代おじさん】
とても紳士な口調で話しかけてくるおじさん。
とても丁寧な言葉で「病院にいくお金が必要なのでお金を下さい」と言われます。
【子供に食べさせたいお姉さん】
無言で近寄ってきてカードを見せます。「子供に食べ物を買うお金を下さい」とカードに書かれています。
【ATMおばさん】
ATMでお金を下ろしていると近寄って来ます。「お金ちょうだい、生活に困ってるの」と言われます。その時は機嫌がよくなかったのか、「Sorry」と断ったら「How can you Do that?」と何度も叫ばれて困りました。
【お金が破れたお姉さん】
破れた10ポンド札(1400円くらい)の破片(5分の1くらい)を見せて来ます。「10ポンド破れちゃったから30ポンドちょうだい」とキツめの口調で言われます。え、30ポンド!?と、最初は要求する額に驚きましたが、10ポンド破れたから30ポンド頂戴の理論が後からじわじわ来ます。
とても寒い日で不憫に思ったので2ポンド渡したところ「30ポンドよ!30ポンド!!」と言われましたが、「いやごめん、それ以上は。。。」というと、「そう、じゃぁ貰っていくわ」と言って2ポンド持っていかれました。何だかなぁ。
【ベビーカーおばさん】
ベビーカーを押して、お金頂戴と言って来ます。ベビーカーに子供はいません。
【ケバブ屋おばさん】
よくケバブの屋台の前に陣取っています。とても犬と仲良しで日中は犬と遊んでいます。「Change please」と言われて「Sorry」と断ると「Thank you, have a good night」と丁寧に返してくれます。とても好印象。屋台でケバブを買った後、お釣りをあげました。
【ビッグイシューおじさん】
オックスフォードの中心でビッグイシューを売っているおじさん。「Hello, boss! big issue?」といつも声をかけてくれる。彼の笑顔はオックスフォードで一番素敵だ。研究がいつもbig issue の僕は Big issueを買った事はないのだけれど。
ビッグイシューがホームレスの支援を目的とした出版物と言うのをyoutube(日本のテレビ番組のコピー)で見た事あるけど、海外と同じ団体なんだろうかね。
ーーー
日本からイギリスにくるとホームレスに絡まれる頻度に驚きますが、研究で疲れきって考える力が全くない状態で「お金頂戴」と言われると、無意識に財布に手がいってしまう事があります。財布の小銭入れをひっくり返して全部あげた事もあります。社会の難しい事はわかりませんが、小銭が余っている人はホームレスにお金をあげてみてはどうでしょうか。
どうしてこの記事を書こうと思ったかと言うと、研究でうまく言ってほしいと願って最近ホームレスに1ポンドお布施したので書きました。実験は上手く行きませんでしたが、まぁそんなもんですわ。(→無事論文になりました)
2022年2月追記:
帰国直前(2020年6月)、事件は起こりました。
イギリスはコロナによるロックダウンの真っ最中。町中のお店というお店は閉まっており、紙の紙幣を使い切って帰国したかったが使う場所が全くない。そのままお金として持って帰ってもいいが、筆者は最後くらい街で困ってるホームレスに全部あげようと思ったのだ。特にロックダウンで観光客は愚か街を出歩く人が本当にいなくなったオックスフォードの街で、これはホームレスがヤバいのではという感情もあった。それで自分のフェアウェルの帰りに神妙な顔つきでお金くださいって言ってきたホームレスに20ポンド紙幣(約3000円)を渡した。彼はたちどころに「うっしゃぁぁパーティじゃぁぁぁ!」とでも言わんばかりに近くにいた友達(ホームレス仲間?)を呼んで肩を組んでお店に繰り出して行った。
いや元気かよ。
またある日、別件のフェアウェルの帰りにバス停の前で40ポンド(約6000円)を渡したたところ、本当に感謝された。バスを待ってる間少し座って話をしたりもした。そして次の日、研究室の掃除を終えて帰路についたとき、バス停の前でまた同じホームレスに遭遇した。彼は僕を見るなり「ハイ!」と大きく手を上げて近寄ってきた。めちゃフレンドリーやな、そんなことを思っていた矢先、彼がモゴモゴと何か言い始めた。よく話を聞くと、お金がなくて困ってるから40ポンドください、とのこと。
ん?????
昨日のお金は?
ごめんもうないんだって言ったら無言で去って行った。
なるほどホームレスにお金を上げても良いけど、一回1ポンドくらいにしておかないと、彼らには後にとっておく、のような使い方はできないのだろう。
だからホームレスなのかホームレスになったからそうなのか。。。
ーーー
おまけ
オックスフォードの教授がホームレスに絡まれて完全無視だったのはちょっと衝撃でした。本当にガン無視でした。それくらい厳しくないと競争に勝てない?とか思ったり。学生らしき女の子が寝ているホームレスにそっとお金あげてたりして感心した事もあったし、ホームレスへの対応は人それぞれだね。
アカデミック、深刻な人手不足?
どーも伊予柑です。
任期が単年度更新なので去年からチラチラと大学教員の募集(J rec in)を眺めたりしてまして。まぁなかなか良いとこがなかったり、出してもお祈りされたりと苦戦しとります。
僕が次のポストを探しとるらしいぞという情報は、狭い世界ですので同じ分野の先生方で共有されているらしく、2月になってぜひウチにと言う勧誘がちらほらあったりする。
誘ってくれる先生方は大変魅力的なので分身の術が使えるなら全部行ってみたいくらいなんですがまぁ無理なのでどこかに落ち着く必要がある。
だけどそれで誘ってくれる先生方が「本当に人がいない!」と口を揃えているので、やっぱり若手、僕たち30前半の人がいないようだ。
僕と同時期に留学してた人たちは米国製薬だったり米国ベンチャーにごっそり就職してアメリカンドリームを掴んでるので全然日本に帰って来てないのでは、と思ったりもする。
要するに今の深刻な人出不足は、博士課程の国内企業就活事情がよくなったことと、海外の就活のハードルが下がった(のか?)こと、博士課程の進学者が減っていることがバッティングしちゃった結果ではないかね。
まぁ一番やばいのは、そんなに人出不足なのに大学の現場からの悲鳴が大きな声になってないことだろうと思うよ。
教授二人退職して募集一人とか、空いた助教ポジの採用はいつになるかわからないってのを現場で見てるので、こりゃ5年、10年の日本のアカデミックの衰退は資金投入しても回復しないだろうね。
以上、現場の感想でした。みなさんどー思いますか?
全合成やってる人の励みにでもなったらと思う回(JACS掲載おめでとう)
どうも伊予柑です。
ついにイギリスの研究成果がJACSに掲載されました!
長い時間がかかりましたが、無事に論文化できて本当に良かったです。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.1c12040
ぱちぱちぱち。
研究の内容はザクっと説明すると、海の海綿からとれた化学物質を新しい化学反応を駆使して市販されてる安ーい原料から化学合成したよ!ということです。
市販されている簡単なパーツから様々な化学反応をしていって、天然から作られる成分を造り上げることを全合成と言うのですが、全合成って本当にとても大変なんです。
ちょうど今大学は卒論、修論、博論の時期で、全合成研究に携わっている人は追い上げで全合成できるかどうかなんてバトっている人もいるかもしれませんね(いや流石にもうきついか)。
今日は全合成に一生懸命取り組んでいる人の少し共感が得られるような話を書こうかなって思います。
1、定期的になんで全合成やってるのかわからなくなる
隣の研究室であったり、同じ研究室でも反応開発と全合成の両方のプロジェクトをやっている研究室はあると思います。反応開発が一人年2~3くらいのペースで論文を出しているのに全合成やってる俺はいつ論文になるんだ。。。
僕もマダンガミンのプロジェクトをやっている時、あぁ、もう反応開発で出しちゃうか!?とか、うーん触媒反応と骨格構築で論文にしちゃうか!!!??とか、そういう考えは何度も頭を巡りました。しかし、それは乗り越えました。
二つ。
二つの考えがあったから。
一つ目は、「留学してJACS」と言う目標。
僕の大学院時代の研究室は、博士課程の学生はたいていAngew. Chem. Int. Edという化学分野であれば誰もが知っている高IF雑誌に論文を通しているラボだったのですが、しかしJACSはなかなか通らない!高嶺の花だったのです。
残念ながら僕は大学院でAngew. に論文を出すことができませんでしたが、これは相当に悔しかったのです。
Angew出すなら出身研究室でポスドクでもすれば出せるかもしれない。せっかく海外行くのだから、出身研究室でもなかなか出すのが難しいJACSになんとしても出そう。
そう思ったのでした。
もちろん教授からも留学してJACSくらい出さなきゃだめ!と念を押されていたので、そのために奮闘しました。
せっかく実現したイギリス留学、せっかく上手く行った鍵反応、JACS通すにゃ全合成しかない!
そう思って全合成達成するまで論文にすることはやめました。
二つ目。
全合成できなきゃアカデミックに残らない。
この分子、全合成できないようじゃ、僕がアカデミックに残って学生に何を教えれる。
すまん、俺はできないが、学生さん、お前はどうにかして俺の研究進めろよ、とでも言うのか。そんな痴態を晒すくらいなら、潔くアカデミックを去ろう!
そう思って全合成に取り組みました。
うーん。結構表現が難しいですが、途中で決して全合成を諦めたわけではなくて、いやもちろん帰国までにできるっしょと、全合成達成をちゃんと狙ってやっていましたよ。
結果コロナで最後の3ヶ月丸潰れ、帰国まで1週間で最後5ステップ、先端 9 mgという、かなり苦戦した状況になってしまったのですが、ただ、やり遂げました。
更に言えば、最後の最後で合成した天然物のNMRチャートを教授に見せて、それでとても気をよくしてくれて、めちゃくちゃ優秀な学生を最後の最適化につけてくれたので、イギリスの大変なコロナの状況でも1年半で論文化できたのです。
自分で全部やるよりも結局最後はトータルで見て良くなったと思うので、本当めでたしめでたし、なんです。
2、自分の腕が悪いんじゃないか
全合成やってると湧いてくるこの疑問。これはもうどこまでいってもついてくる。しかし考えてみてほしい。君がやってダメな反応は、他の人がやってもダメ。上手い人がやったらできる、みたいな、科学的再現性のない反応は、なかなか全合成で使いにくい。つまり、俺ができなけりゃ、その反応はだめだ(まぁ一部開き直り)。君ができないと思えば、その分子はできない。
信じよう。
(だけど、強塩基使う場合なんかは原料をエバポで3回トルエン共沸して、撹拌子を中に入れて真空ポンプでトルエン飛ばしてから溶媒入れて使うとか、そういうケアはきちんとした方が良いですよ!)
3、ここまで来たのにまた上手くいかない!
これ、結構絶望するんですよ。
僕もその時やってたルートの23ステップ目がどうにも上手く行かなくて、たくさん検討したけどほとんど複雑化してしまって最高収率が30%以下でした。更に少量のサンプルで挑戦したE環構築のWittigもno desired productで、この段階で少なくとも問題が二つあるキツさ。
※論文中のBocを脱保護して還元的アミノ化、続く酸化的ラクタム化の部分です。
(最初のルートはBocを外さずに、酸化的ラクタム化、Boc脱保護、アミドアルキル化で合成していましたが、どうにもアミドのアルキル化の収率がマズイ。ここまでくると湿気の影響も考えて50 mg スケールで塩基振りまくる、みたいなこともできないのでいよいよ詰んでました)
そしてその日は来ます。
先端がなくなった時はかなり絶望しました。
その時はとにかく最初に戻って量上げしながら、量あげ期間(約1ヶ月)ずーっとどうするか策を練ってました。
とうとう、先端までもうもち上がるっていう直前、もう先がない、このまま進んでもいよいよダメだと思った時、実験が止まって、朝は起きれなくて、ベッドでぼーっとしてました。
研究室は朝8時スタートなのに、その日は10時におきました。
普通なら急いでバスに乗って大学に行くのですが、何を思ったのか、大学まで5 kmの道を徒歩で行くことにしました。あの時はなぜそうしたのか、本当にわからないですが、とにかく歩いたのです。
そしたら、閃いたんです。文献で調べたとかではないです。
あれ、アミド化がだめなら最初からBoc外せば良いのでは。。。
結構シンプルかもしれないですが、歩いている最中(確かオックスフォードの新しい物理棟の手前らへんを歩いているときです)に頭の中で、アミンフリーで酸化してラクタムなんかできんのか?いやそもそもアミノジオールの極性大丈夫か?分液で水相にいくかもしれないからそこもケアしなきゃとか、もう頭の中で新しいルートの可能性が何周も巡りました。
到着すると無我夢中で実験をセットする直前で我に帰る。
ん。。。アミンフリーのアルコールの酸化ってあるの?
実験前に深呼吸してサイファインダーで調べました。
東北大岩渕研からAZADO、CuCl、bpy、DMAP、空気の条件が一例だけ報告されていました!
https://doi.org/10.1002/anie.201309634
本当にこれは奇跡と思いました。そして試薬は全て研究室にある(結構大事)。
早速、化合物をTFAで脱Bocして、同時に長鎖アルコールを酸化してアルデヒドにして、還元的アミノ化、はまずまずの収率で進行。
いよいよAZADO酸化を試すと。。。
反応形中は茶褐色から鮮やかな緑色になり、文献通り!
TLCを上げるとアミド化のルートで少量得られてくるものと同じRf値の生成物が!!!
もうもう本当にこれは感動的でした。(帰国した後岩渕研にはお礼に行きました)
その時の実験台のラクガキの写真を載せて、今回は終わりにします。
全合成の醍醐味っていうか、きつい部分なんかも共有して、全合成やってる人の少しでも励みになったらなと思います。以上。
大学の役職
どうも伊予柑です。
今日はかくかくしかじかで学部長と面談しました。
最初は流石に自分のようなペーペーが一対一で面談なんてどうしましょうと思ってたんですが、やってみれば途中から研究の話になってあれやこれやワイワイやっているうちに盛り上がって楽しく話て帰るという、素敵な面談でした。
それでまぁ面談の後で教授と大学教員の役職について小話したんですが、これがなかなか面倒だなぁと思った次第であります。
みなさんは大学教員の役職ってどんなのがあるか知ってますか?
教授、准教授、助教授、助教、講師、助手。。。
まぁこのあたりは聞いたことがあると思います。
最初に言うならば、助教授は昔の呼び方で最近は准教授に変わりました。
英語のAssociate Professorに倣って呼び方を変えたんだとか。
助手は今でもたまに見かけるけど、こちらも名称変更で今はほとんどが助教に変わってます。
助手というと教える資格がないような意味合いなので助教にしたのだとか。
これまた海外のAssistant Professorに倣ったという部分でも当てはまりますが。
さて、では講師は。。。
海外ではLecturer。
多分海外の意味合い的には非常勤の先生、あるいは大学の正規職以外でどっかから金持ってきて在籍してる先生、みたいなニュアンスで使われてる役職な気がします。(どうなんでしょう詳しい人おりますか?)
ところが日本の講師を見てみると大体は常勤で、大学の正規職で、助教よりちょい年齢上?かなみたいな位置付け。
教授にも講師ってなんですかって確認したら、やっぱり年齢的には准教授でいいんだけど業績が足りないからとりあえず講師、あるいは准教授に上げてしまったら異動する時教授職で探さないといけないから、とりあえず移りやすいように講師にしとこ、とかもあるんだとか。
分類がこれくらいならまぁ可愛いもんですが実際はそんなことはなくてですね、実際はもっと複雑難解なことになってます。
テニュアトラック助教:助教にするにはちょっと早いけん、業績積んで審査通ったら任期なしの助教にするよ。テニュアトラック期間の役職は。。。助教?(知らない)
テニュアトラック准教授:准教授にするにはちょっと早いけん、業績積んで審査通ったら任期なしの准教授にするよ。テニュアトラック期間の役職は。。。やっぱりこれも助教?
特任助教:なんかの予算で一時的に在籍してる助教さん。予算切れたら更新終わりだから容赦なく切るときゃ切ります。それまでに大学の正規職にありつければいいが。。。
特任准教授:なんかの予算で一時的に(以下略
テニュアトラック准教授2:え、また?准教授にするにはちょっと早いけん、業績積んで審査通ったら任期なしの准教授にするよ。テニュアトラック期間の役職は准教授だよ。(???)
助教:まるで正規職のような役職だが大学にポスドクの役職がなかったから助教という役職だけど実際はポスドクだからポスドクだよ。(?????)←意味がわからないと思うけど、正直僕もよくわかっていない。助教で採用したいというオファーメールを受け取って海外から意気揚々と帰国したら初日に大学にポスドクっていう役職がないから助教ということになっているけど実際はポスドクだからと言われて意図せずセカンドポスドクをすることになった。ポスドクなので自分の研究は愚か学生もつけてもらえない(その辺りは教授の采配だが、教授がNoといえばNoなのでポスドクに研究室運営に意見する権限は与えられてないか、極めて弱い)因みに手取り〇〇という給与の話を聞いて振り込まれた額が年収〇〇だったというフルコンボも経験させてもらえた。ねぇ訴えたら勝てるの?(鵜呑みにして役職助教って書いてたら異動に不利だから特任助教って書きなさいって後で別の人に教えてもらった。なんだろね、ほんと)
他にも多分もっといろんな役職があると思う。
なんかもっとこう、スリムになりませんかね。
あ!そうだ!全合成TIPSがいつでも簡単に見れるように右側のカテゴリーに追加しといたよ。
研究を先に進めるには
さぁ昨日からきちんと仕事はじめしてきました。
やっぱり職場の方がデスクワークも捗るね。
いや家でもできるかもしれないけど、息子が可愛すぎる活性化エネルギーは越えられないでいる。
実は冬休みの最初に学生さん達の半年分の報告会の資料などをチラチラ見直してて思ったことがあるので書いてみます。
やっぱしっかりしたアドバイスをするには自分がミーティングの資料をちゃんと読み込まないといかんと思いつつ、普段は自分の研究と家庭があるとなかなかそういう時間も取れず毎週過ぎていくんで、冬休みみたいな時間が大変貴重である。
それでミーティングの資料を見て第一印象が、これは全く予想外だったのだけど、なんと報告会の資料をしっかり読んでもなかなか研究の本質が見えにくいという事実です。
思うに原因は二つあって、一つは実験結果がふわっとしてることと、もう一つはフューチャープランが書き込まれていないということ。
実験結果がふわっとしてるっていうのはただTM not detectedとかMS not detectedみたいなことしか書かれていない。
※TMっていうのはtarget molecureの略で目的物という意味、MSはマス(質量分析)という化合物の分子量がわかる測定。要するに目的物の質量が含まれない場合は目的物がない可能性が高いということ。
TM not detected。
うん、わかる。じゃ他は?
MS not observed。
うんうん、わかる。じゃぁ他は?
他は?っていう部分が合成ではかなり重要です。
あとやっぱりMSは万能な装置ではないので、crudeのMSでいるいないを判断するのはなんだか違う気がしてきました。CrudeのNMRを見て、TLCのスポットを単離してきて、NMRを見てから最後の間違いないよね?の確認で使うのがMSかなぁ。原料が残った消えたをMSで確認するのは良いかもしれないがTM有無は偉い先生の言葉を真似すると俺のセンスじゃねぇなぁ。(偉い先生は偉いのでブチリチの使用すら文句をいう)
次にフューチャープランが書き込まれていないことについて。
フューチャープランは自分のこうやりたいです!っていう自己主張の場だと思うので、今後の検討の箇条書きだけじゃなくて、色々バンバン書いたらいいと思うのよ。(そのためには研究について相当考える必要がある)
とにかく色々書いてたら先生からたいてい「えーそれはちょっとなぁ」みたいなレスポンスを得られるんだけど、たまにある「いいね、やってみよう」を引き出せるとパチンコの確変みたいな感じ。それだけじゃなくて「えーそれはちょっとなぁ、じゃこうしたら?」は自分の経験や論文からは得られない貴重なアドバイスだったりするよ。
なのでまぁ、忙しい中でのミーティングですが、実験結果の解像度を上げること、フューチャープランに自分の主張をバンバン書くこと、この二つで毎週のミーティングがより充実するかもよーと思った次第であります。
教員側としては、ミーティング資料だけでわかりにくい場合には積極的にミーティングの後で学生さんに直接話を聞きにいく、くらいで良いんだなと思ったので今年はその点頑張っていきます。